教員からの転職情報を発信しています!
今回は教員の離職率についてお伝えしていきます!
日本の教育現場は、今、大きな転換期を迎えています。
少子高齢化による学齢人口の減少、グローバル化や情報技術の進展に伴う教育内容の変化など、教育を取り巻く環境は急速に変化しています。
このような変化の中で、教育の質を維持・向上させていくためには、その担い手である教員の役割がますます重要になっています。
しかし同時に、教員の働き方や職場環境に関する課題も浮き彫りになってきています。
長時間労働、増加する業務量、複雑化する保護者対応など、教員を取り巻く環境は決して楽観視できるものではありません。
特に注目すべきは、教員の離職率の問題です。
一般的に、教員は「安定した職業」というイメージがあり、実際に他の職業と比較すると離職率は低いとされています。
しかし、その数字の裏に潜む実態は、必ずしも教育現場の健全性を示すものではありません。
教員の離職率は1%以下と極めて低い水準である
令和4年地方公務員退職状況等調査によると、日本の教員の離職率は約0.93%と1%を下回っています。この数字は、一般企業(15.0%)一般企業と比較して極めて低い水準にあります。しかし、離職率は上昇傾向にあり、若手教員、特に25歳未満の教員の離職率が高くなっており、これが新たな課題となっています。
統計データから見る教員の離職状況
地方公務員退職状況等調査のデータを分析すると、以下の重要な傾向が明らかになります。
全体的な退職者数の増加
平成25年から令和4年の10年間で、普通退職者数は約1.8倍に増加しました。
平成25年:5,620人 → 令和4年:9,929人
若手教員の退職増加
25歳未満の退職者数は約3.8倍に急増しています。
平成25年:256人 → 令和4年:975人
若手教員の退職割合の上昇
全退職者に占める25歳未満の割合が倍以上に上昇しています。
平成25年:4.56% → 令和4年:9.82%
一般企業との比較
教員の離職率を一般企業と比較すると、その特殊性が明確になります。
一般企業の離職率
厚生労働省の調査によると、日本企業全体の令和4年度の離職率は15.0%です。
これは、1年間で従業員の約15%が入れ替わることを意味します。
教員の離職率
総務省による令和4年地方公共団体定員管理調査結果によると、令和4年の教員の総人数(1,064,340人)であり、令和4年の退職者数(9,929人)から算出すると、教員の離職率は約0.93%となります。
比較による考察
厚生労働省による令和4年雇用動向調査結果の概況によると一般企業の離職率は15.0%であり、教員の離職率(約0.93%)は、一般企業(15.0%)と比べて極めて低いことがわかります。
この低さは、教職の安定性や専門性の高さを反映しています。
一方で、転職の難しさや職場環境の課題も示唆しています。
教員の離職率が低い理由
教員の離職率が一般企業と比較して極めて低いことが明らかになりました。
では、なぜ教員はこれほど長く同じ職場に留まる傾向があるのでしょうか。
ここでは、教員の離職率が低い主な理由について解説します。
職業の安定性
教員の職業としての安定性は、低離職率の最も大きな要因の一つです。
- 終身雇用制度
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公立学校の教員は地方公務員として、基本的に定年まで雇用が保障されています。この雇用の安定性は、多くの人にとって魅力的な条件です。
- 経済的安定
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教員の給与体系は明確で、定期的な昇給が保証されています。また、ボーナスや退職金などの福利厚生も充実しており、長期的な経済的安定が見込めます。
- 不況の影響を受けにくい
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教育は社会の基盤であり、景気変動の影響を受けにくい分野です。そのため、一般企業のような大規模な人員整理や倒産のリスクが極めて低いです。
教員は安定しているから離職する理由がないよね。
社会的信用と評価
教員という職業は、社会的に高い評価を受けており、これも離職を抑制する要因となっています。
- 社会的地位
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教員は「先生」として尊敬される立場にあり、社会的な地位が比較的高いとされています。この社会的評価は、職業に対する誇りや満足度につながります。
- 使命感
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多くの教員が、子どもたちの成長に関わる重要な役割を担っているという使命感を持っています。この使命感が、困難な状況でも仕事を続ける原動力となっています。
- 地域社会との結びつき
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特に地方では、教員は地域社会の重要な一員として認識されています。この社会的な結びつきが、職場への定着を促進する要因となっています。
教員を辞めようとすると絶対に「もったいない」って言われるよね。
キャリアパスの特殊性
教員のキャリアパスは一般企業と比べて特殊な面があり、これが低離職率につながっています。
- 専門性の高さ
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教員免許は他の職業には転用しにくい専門的な資格です。このため、他の職種への転職のハードルが高くなります。
- 年功序列的な昇進システム
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教育現場では、経験年数が重視される傾向があります。このため、長く勤めるほど地位や給与が上がりやすい構造になっています。
- 転職市場の限定性
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教員の転職市場は、公立学校間の異動や私立学校への転職など、比較的限られています。これが、他業種への転出を難しくしています。
教員以外の仕事がイメージつかないのもあるよね。
ビジネス経験の不足
多くの教員は大学卒業後すぐに教職に就くため、他の職種での実務経験が乏しいことが多いです。これは離職を抑制する要因となっています。
- ビジネススキルの不足
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一般企業で求められるビジネススキル(営業、マーケティングなどの数値を追うなど)の経験が少ないため、転職に対する不安が大きくなります。
- 就職活動の経験不足
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多くの教員は新卒で教職に就くため、就職活動の経験が乏しく、転職活動に対する心理的ハードルが高くなりがちです。
- 民間企業文化への不安
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教育現場とは異なる企業文化や仕事の進め方に対する不安が、転職を躊躇させる要因となることがあります。
これらの要因が複合的に作用することで、教員の離職率は低く抑えられていると考えられます。
しかし、低離職率が必ずしも教育現場の健全性を示すわけではありません。
教員の低離職率の陰に潜む問題
教員の低い離職率は一見、職場環境の良さや職務満足度の高さを示しているように見えます。
しかし、その背後には様々な問題が潜んでいる可能性があります。
ここでは、低離職率の陰に隠れた課題について考察します。
長時間労働の問題
教員の長時間労働は深刻な問題として認識されています。
- 恒常的な残業
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授業準備、成績処理、生徒指導など、正規の勤務時間外の業務が常態化しています。
- 持ち帰り仕事
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学校では終わらない仕事を自宅に持ち帰ることも多く、実質的な労働時間は更に長くなっています。
- 休日出勤
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部活動の指導や学校行事の準備のため、休日出勤も珍しくありません。
でも、辞めたくても辞められない…
精神的ストレス
教員は高い精神的ストレスにさらされています。
- 生徒指導の困難
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問題行動を起こす生徒への対応や、多様化する生徒のニーズへの対応は、大きな精神的負担となっています。
- 保護者対応
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モンスターペアレントと呼ばれるような難しい保護者への対応も、教員のストレス要因の一つです。
- 責任の重さ
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生徒の成長や将来に大きな影響を与える立場にあることへの責任感が、常に重圧となっています。
こんなにストレスばっかなのに…
ワークライフバランスの課題
教員の仕事は私生活にも大きく影響を及ぼしています。
- 私生活時間の確保困難
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長時間労働により、家族との時間や自己啓発の時間を確保することが難しくなっています。
- 心身の疲労
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過度の労働による心身の疲労が蓄積し、健康問題につながるケースも少なくありません。
- キャリア発展の機会不足
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多忙な日々の中で、新しいスキルを習得したり、キャリアについて考えたりする余裕がない状況が続いています。
これらの問題は、表面上の低離職率からは見えにくいものですね。
しかし、教育の質を維持・向上させ、教員の働き方を改善していくためには、これらの課題に真摯に向き合う必要があります。
初任教員の離職率問題
教員全体の離職率は低いものの、新任教員、特に若手教員の離職率は上昇傾向にあります。この現象は、教育現場が抱える問題の一端を示しているとも言えます。ここでは、新任教員の離職問題について詳しく分析します。
東京都の事例:新規採用者の1年以内離職率
東京都教育委員会の発表によると、2023年度の新規採用者の1年以内の離職率は4.9%でした。この数字は一見低く見えるかもしれませんが、教員全体の離職率(約1%)と比較すると、かなり高い値であることがわかります。
- 急激な環境変化
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学生から教員への急激な立場の変化に適応できない新任教員も多いと考えられます。
- 現実とのギャップ
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理想とする教育と現実の教育現場とのギャップに戸惑う新任教員も少なくありません。
- 早期の離職決断
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1年以内という短期間で離職を決断するということは、それだけ現場の状況が厳しいことを示唆しています。
若手教員が直面する困難
新任や若手教員は、ベテラン教員とは異なる困難に直面しています。
- 業務量の多さ
-
授業準備や事務作業など、慣れない業務をこなすのに時間がかかり、労働時間が長くなりがちです。
- 生徒指導の難しさ
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生徒との年齢が近いこともあり、適切な距離感を保ちながら指導することに苦労する場合があります。
- 保護者対応の困難
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経験不足や若さゆえに、保護者から信頼を得られにくかったり、難しい要求に対処できなかったりすることがあります。
サポート体制の現状と課題
新任教員への支援体制は徐々に整備されてきていますが、まだ多くの課題が残されています。
- メンター制度の不十分さ
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多くの学校でメンター制度が導入されていますが、メンター教員の多忙さや指導スキルの不足により、十分に機能していない場合があります。
- 研修の質と量
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新任教員向けの研修は実施されていますが、実際の現場のニーズとマッチしていなかったり、研修自体が業務負担増加につながったりするケースもあります。
- 業務軽減措置の不足
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新任教員の業務負担を軽減する措置が十分に取られていない学校も多く、早期の燃え尽き症候群につながるリスクがあります。
新任教員の離職問題は、教育現場全体の課題を凝縮して表しているとも言えます。
彼らが直面する困難を解決することは、教育の質の向上と持続可能な教育システムの構築につながります。
教員の多忙化による離職
教員の多忙化は、離職率に直接的な影響を与える重要な要因の一つです。ここでは、教員の多忙化の実態とその影響について詳しく見ていきます。
業務内容の多様化
教員の業務は、従来の「教える」という役割を超えて、多岐にわたるようになっています。
- 生徒指導
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学習面だけでなく、生活面や心理面でのサポートも求められ、個別の対応に多くの時間がかかります。
- 特別支援教育
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発達障害や学習障害を持つ生徒への対応など、特別な支援を必要とする生徒が増加しており、それに伴う業務も増えています。
- ICT活用
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教育のデジタル化に伴い、ICT機器の操作や教材のデジタル化など、新たなスキルの習得と実践が求められています。
部活動指導の負担
部活動の指導は、教員の多忙化の大きな要因の一つとなっています。
- 長時間の指導
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平日の放課後や休日にも及ぶ長時間の指導が常態化しています。
- 専門外の指導
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自身の専門でない部活動の指導を任されることも多く、準備や研修に追加の時間が必要となります。
- 大会引率と事務作業
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試合や大会への引率、関連する事務作業なども教員の負担となっています。
- 保護者対応
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部活動に関する保護者からの要望や苦情への対応も、教員の精神的負担となっています。
事務作業の増加
教育の質の向上や説明責任の要求が高まる中、事務作業も増加の一途をたどっています。
- 報告書作成
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様々な教育活動に関する報告書の作成が求められ、その量は年々増加しています。
- 会議・打ち合わせ
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校内外での会議や打ち合わせの増加も、教員の時間を圧迫しています。
- 調査・アンケート対応
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教育委員会や研究機関からの各種調査やアンケートへの対応も増えています。
- 個人情報管理
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生徒の個人情報管理の厳格化に伴い、関連する事務作業も増加しています。
保護者対応の複雑化
保護者との関係性も、教員の業務を複雑化させる要因となっています。
- 連絡の増加
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メールや電話での保護者とのやり取りが増え、時間外の対応も増加しています。
- 要求の多様化
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教育に対する保護者の要求が多様化・高度化し、それに応えるための準備や対応に時間がかかります。
- トラブル対応
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いわゆる「モンスターペアレント」への対応など、難しい事案への対処も増えています。
- 家庭環境への配慮
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複雑化する家庭環境に配慮した指導や支援も求められ、個別の対応が必要となっています。
教員の多忙化問題は、個々の教員の努力だけでは解決が難しい構造的な問題です。教育システム全体の見直しや、社会全体での支援が必要となっています。
ただ実は教員の働き方改革も進んできていることは事実でもあります!
▼教員の働き方改革の現状はこちら▼
教員の離職率を上げないためにも、教員の負担になっていることを見直していきたいですね。
まとめと今後の展望
今回は、日本の教育現場における教員の離職率問題について解説してきました。
- 日本の教員の離職率は、全体としては低い水準にあります。
- しかし、若手教員の早期離職率は上昇傾向にあり、これは深刻な問題となっています。
- 低い離職率の背景には、職業の安定性や社会的評価の高さがある一方で、転職の難しさや労働環境の厳しさも影響しています。
- 教員の多忙化:授業準備、生徒指導、部活動指導、事務作業など、業務の多様化と増加。
- ワークライフバランスの崩壊:長時間労働による私生活への影響。
- 若手教員のサポート不足:経験不足や現実とのギャップに対する支援体制の不十分さ。
- キャリアパスの限定性:教員としてのキャリアの選択肢が限られていること。
教員の離職率問題は、今後も増加してくるでしょう。
私自身、最近は教員を辞めたいと言う人と面談をすることが多いです。
▼教員を辞めたい人のリアルな話はこちら▼
教員が誇りを持って働き続けられる環境を整備し、質の高い教育を持続的に提供できる体制を構築することが、日本の未来を担う子どもたちのためにも不可欠です。
教員の離職率問題は、単なる数字の問題ではありません。
私たちの社会が教育と教員をどのように位置づけ、支援していくかという根本的な問いかけでもあるのです。この課題に真摯に向き合い、解決に向けて社会全体で取り組んでいくことが、今、求められています。
今回は以上になります!
ありがとうございました!
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