ゆとり加害者の保護者との面談、どうしたらいいかな




保護者の気持ちを理解して対応していく必要がありそうだね!
いじめ問題が発覚したとき、被害者への対応と同じくらい難しいのが「加害者の保護者への対応」です。
「うちの子がそんなことをするはずがない」と否定される、逆に怒鳴られる、事実と異なる主張をされる…。こうした場面に直面し、保護者対応に悩んでいる教員の方は少なくありません。
文部科学省の調査でも、教員が精神疾患で休職する原因として「保護者との対人関係」が上位に挙がっています。特に、いじめの加害者保護者との面談は、慎重かつ適切な対応が求められる場面です。
この記事では、文部科学省やNITS(独立行政法人教職員支援機構)の公式資料をもとに、いじめ加害者の保護者対応における具体的なステップ、面談時の話し方、よくあるトラブルへの対処法を解説します。
明日からの保護者対応に役立つ実践的な内容ですので、ぜひ参考にしてください。
- いじめ加害者の保護者対応が難しい理由
- 保護者対応の基本的な流れ
(初期対応~面談~事後フォロー) - 面談時の具体的な話し方と留意点
- 加害者保護者の心理を理解する
- やってはいけないNG対応
- 理不尽な要求への対処法
なぜ加害者の保護者対応は難しいのか?



いじめ問題において、加害者の保護者への対応は教員にとって大きなストレス要因となります。なぜこれほど難しいのでしょうか。
保護者も大きなショックを受けている
「うちの子がいじめをしていた」という事実は、保護者にとって悪夢のような出来事です。
自分の子育てを否定されたように感じたり、他の保護者との関係で孤立する不安を抱えたりします。NITSの資料でも、「わが子がいじめをしていた、こんな知らせを受けたらどんなにつらいでしょう」と、加害者保護者の心情に寄り添うことの重要性が指摘されています。
我が子を守りたい心理が働く
どんな保護者でも、我が子を守りたいと思うのは当然です。
そのため、事実を認めたくない、学校の説明を疑う、被害者側にも非があると主張するといった反応が出てきます。これは保護者が悪いのではなく、親としての自然な防衛反応なのです。
初期対応のミスが対立を生む
初期段階に謝罪もなかったということで、不信感を募らせ対応が難しくなる場合が多く見られます.
最初の対応が不適切だと、本来協力し合うべき学校と保護者が対立関係になってしまい、問題が複雑化・深刻化するリスクがあるのです。




学校への不信感があると、すべての説明が疑いの目で見られてしまうね
いじめ加害者保護者対応の基本的な流れ



STEP1:事実確認と校内での情報共有
保護者に連絡する前に、まず校内で事実関係を正確に把握することが必要です。
文部科学省のQ&Aでは、「教師間やスクールカウンセラー等の間で情報交換を行い、子どもたちに事実関係の確認を行う」ことが推奨されています。
- いつ、どこで、誰が、何をしたのか
- 被害者・加害者・目撃者それぞれの証言
- 物的証拠
(メッセージのやり取り、持ち物の破損など) - いじめのタイプ
(リーダー争い型、排除型、犯罪型など)
STEP2:面談の準備
NITSの資料では、面談前の準備として以下の項目が挙げられています。
時間
面接可能な時間帯ですみやかに調整します。
場所
家庭訪問、または学校の応接室等、保護者の事情と希望に配慮してプライバシーが守れる設定をします。
参加者
複数職員で対応します。大勢の職員が取り囲むような人数にならないようにしましょう。
役割分担
誰が中心に進めるか、記録者は誰かなどを決めておきます。
- 事実経過の整理
- 謝罪すべき点の確認
- 学校としての見解の整理
- 考えられる解決策の検討
一人で対応するのは絶対に避けよう!
STEP3:初回面談の実施
面談では、保護者の気持ちを受け止めながら、事実を丁寧に伝えることが重要です。
詳しい話し方については、次の章で解説します。
STEP4:継続的なフォローと連携
一度の面談で終わりではありません。
今後の対応方針を確認し、定期的に連絡を取り合いながら、子どもの変化を見守っていく必要があります。文部科学省のQ&Aでは、「保護者と学校が協力して、その後の人生に寄り添う視点」の重要性が強調されています。
面談前の準備で押さえるべきポイント



面談の成否は、事前準備で決まると言っても過言ではありません。
複数職員での対応が必須
NITSの資料では、「複数職員で対応します」と明記されています。
一人で対応すると、以下のようなリスクがあります!
- 言った・言わないのトラブル
- 教員自身の精神的負担が大きい
- 客観的な判断ができなくなる
- 記録が取れない
理想的な参加者は、担任・学年主任・生徒指導主事などです。管理職の同席も検討しましょう。
事実経過の整理と記録
面談前に、以下の情報を整理しておきます。
- いじめの具体的な内容
(いつ・どこで・何があったか) - 被害者・加害者・目撃者の証言
- 学校が確認できた客観的事実
- 不明確な点、推測にとどまる点
NITSの資料でも、「客観的な事実と推測、感情を区別して聴く」ことの重要性が指摘されています。
役割分担の明確化
司会進行役
面談の流れをコントロールし、保護者の話を聴く
記録係
会話の内容を正確に記録する
補足説明役
必要に応じて事実関係や学校の対応を補足する
記録は必ず残そう!後々のトラブル防止になるよ
謝罪すべき点と学校の見解の整理
事実を丁寧に確認して学校の責任が明確な場合には、まず謝罪することが必要です。
- いじめの早期発見ができなかったこと
- 子どもにつらい思いをさせてしまったこと
- 保護者に心配をかけたこと
ただし、事実関係が不明確なうちに全面的に非を認めることは避けます。「現時点で把握している範囲では」といった前置きを使いましょう。
面談時の具体的な話し方【実践例つき】



NITSの研修資料「いじめ問題に関する保護者との連携、信頼関係構築の在り方」では、面談時の8つのポイントが示されています。
ポイント①:保護者の話を遮らない(傾聴)
【基本姿勢】
話をさえぎるような言葉は控えましょう。聴きたいことや伝えるべき内容は整理しておき、十分に話を聞いた後で話します。
ポイント②:相づちと要約で理解を示す
効果的な相づちで、伝わっていることを実感できると話しやすくなります。
「うん、うん」よりも、「はい、よくわかります」と丁寧に応対しましょう。
【要約の例】
教員:「つまり、〇〇さんはご家庭では特に変わった様子はなく、むしろいつも通り元気だったということですね」




相づちが多すぎるのも良くないので、適度にね・・・
ポイント③:事実・推測・感情を区別する
客観的な事実と推測、感情を、区別しながら丁寧に聞いていきます。
【記録を取る際の声かけ】
教員:「学校としてきちんと把握したいので、メモを取らせていただいていいですか?」
記録を残すことで、正確な情報共有ができます。
ポイント④:怒りの背景を理解する
保護者が怒っている場合、その背景には何があるのかを考えます。
NITSの資料では、「怒りの背景には何があるのだろうと、相手の気持ちをときほぐしていきます」とあります。
- 学校への不信感
(なぜもっと早く気づかなかったのか) - 自分の子育てを否定された気持ち
- 他の保護者からどう見られるかという不安
- 被害者への申し訳なさ
怒りに振り回されず、冷静に対応することが大切だよ
ポイント⑤:最も訴えたい内容(主訴)を把握する
保護者が本当に求めていることは何かを見極めます。
相手が一番求めていることは何なのかを把握するように努めます。
- 事実関係を正確に知りたい
- うちの子の言い分も聞いてほしい
- 今後どうすればいいか教えてほしい
- 被害者への謝罪の方法を知りたい
ポイント⑥:今後の対応と期限を明確化
面談の最後に、要点と今後の対応を確認します。
- 話し合いの要点
- 学校がすぐにできること
(何をいつまでに) - できないこと(理由を明確に)
- 判断が難しい場合の回答期限
- 次回の連絡方法と日時
【会話例】
教員:「本日お話しした内容を整理させていただきます。まず、学校として〇〇については△△までに対応いたします。一方、□□についてはすぐにお答えできませんので、学校内で相談してから◇日までに改めてご連絡させていただきます。よろしいでしょうか」
ポイント⑦:子どもを守る視点を共有する
加害者であっても、子どもは守られるべき存在です。
文部科学省のQ&Aでも、「加害側の子どももまた傷つき、支援を必要としている」と明記されています。
【伝え方の例】
教員:「〇〇さんの行動の背景には、何か困っていることやストレスがあるのかもしれません。学校としても、〇〇さんが適切な行動を学び、成長できるよう支援していきたいと考えています」
ポイント⑧:家庭での協力をお願いする
NITSの資料では、保護者に以下の協力をお願いすることが推奨されています!
- 家庭が子どもの安心できる居場所となるような環境づくり
- 子どもの話をじっくり聞いて理解者になること
- 学校と連絡を密にすること
一緒に子どもを支えていく姿勢を示すことが大切!
面談での具体的な会話例



実際の面談でどのように話せばいいか、会話例を示します。
【場面1】面談の導入
教員:「お忙しいところお時間をいただきありがとうございます。本日は、〇〇さんと△△さんの間で起きたことについて、お話しさせていただきたくご連絡いたしました」
保護者:「うちの子がいじめをしたって言うんですか?」
教員:「現時点で学校が把握している事実をお伝えし、ご家庭での〇〇さんのご様子もお聞きしたいと思っております。まず、学校で確認できたことからお話しさせてください」
【場面2】事実を伝える
教員:「◇月◇日の昼休みに、〇〇さんが△△さんに対して『きもい』『うざい』といった言葉を繰り返し言っていた場面を、複数の生徒が目撃しています。また、△△さんの持ち物が隠されるということも起きており、〇〇さんが関わっていたという証言もあります」
保護者:「そんな…うちの子がそんなことを…」
教員:「保護者様も驚かれたと思います。〇〇さんは、ご家庭ではどんな様子でしたか?何か気になることはありましたか?」
【場面3】保護者の気持ちを受け止める
保護者:「学校は何をしていたんですか!なぜもっと早く気づいてくれなかったんですか!」
教員:「お怒りはごもっともです。学校として、早期に気づくことができず申し訳ございませんでした。〇〇さんにも△△さんにも、つらい思いをさせてしまったことを深くお詫びいたします」
【場面4】今後の対応を確認する
教員:「今後、学校としては以下のように対応していきたいと考えています。まず、〇〇さんに対して、どうしてそのような行動をとってしまったのか、丁寧に話を聞きます。その上で、適切な行動について一緒に考えていきます。ご家庭でも、〇〇さんの話を聞いていただき、学校と連携しながら支援していただけますでしょうか」
保護者:「はい…わかりました」
教員:「次回は◇日までにご連絡いたします。何かお気づきのことがあれば、いつでもご連絡ください」
加害者保護者の心理を理解する



保護者の反応を理解するためには、その心理状態を知ることが重要です。
「自分の子育てを否定された」と感じる
子どもがいじめをしたという事実は、保護者にとって自分の子育てが失敗だったと突きつけられるような体験です。
特に、普段から子育てに一生懸命取り組んできた保護者ほど、このショックは大きくなります。
他の保護者との関係で孤立する不安
文部科学省のQ&Aでも、「保護者も否認したい気持ちになっていたり、他の保護者との関係で孤立感を深めていることがあります」と指摘されています。
「うちの子がいじめの加害者」というレッテルを貼られることへの恐怖があるのです。
被害者側への申し訳なさと子どもへの愛情の板挟み
我が子の心配をするのは、被害児も加害児も同様ですが、置かれている状況は大違いです。
被害者には申し訳ないと思いつつも、自分の子どもも守りたい。この板挟みの状態が、保護者を苦しめています。
学校への「なぜもっと早く」という怒り
いじめが長期間続いていた場合、「なぜ学校はもっと早く気づいてくれなかったのか」という怒りが湧くのは自然なことです。
この怒りの背景には、「早く対応してくれていれば、ここまで大きな問題にならなかったのに」という思いがあります。




保護者の複雑な気持ちに寄り添うことが大切だね
やってはいけないNG対応



文部科学省とNITSの資料をもとに、避けるべき対応を整理します。
頭ごなしに子どもを責める
文部科学省のQ&Aでは、「頭ごなしに叱ったり、一方的・機械的に懲戒を行うだけでは解決になりません」と明記されています。
保護者の話を途中で否定する
NITSの資料では、「保護者のありのままを受け止めて、決して頭から否定せず、考え方の背景を理解していきます」とあります。
被害者保護者の要望をそのまま伝える
被害者保護者の要望を、そのまま加害者保護者に伝えることは避けましょう。
いじめていた子どもの保護者からの謝罪を求める、または、被害にあった子どもと保護者に謝罪したい等の申し出については、気持ちを十分受け止めて、全体を見通して今後考えるべき課題としましょう。
「お宅の教育が…」と家庭を責める
家庭環境や子育てを直接批判することは、信頼関係を完全に破壊します。
文部科学省のQ&Aでも、「加害側の子どももまた傷つき、支援を必要としている」という視点が強調されています。
一人で抱え込む
担任が生徒や保護者との関係などで苦慮しているときにこそ、気軽に相談ができるような職場の雰囲気づくりが大切です。
一人で対応すると、判断ミスや精神的な負担が大きくなります。
必ず複数体制で対応しましょう。




一人で悩まないで!チームで対応することが大切
こんなときどうする?ケース別対応



実際の現場でよくある困った場面への対処法を紹介します。
ケース1:「うちの子は絶対にやっていない」と否定される
文部科学省のQ&Aでは、このような場合の対応が示されています。
【対応方法】
「残念ながら事実を積み重ねるとお子さんが加害側であると判断せざるを得ません。被害者の証言や周囲の客観的な情報とお子さんの認識が食い違っているのはなぜだと思われますか」
感情的にならず、事実を淡々と説明することが重要です。
ただし、子どもの言い分も十分に聞き取る姿勢を示しましょう。
ケース2:逆ギレされて怒鳴られる
NITSの資料では、「相手が大声をだしているからといって、悪質な苦情や不当な要求といった先入観を持たないように意識しましょう」とあります。
【対応方法】
①怒りの感情を受け止める:「お怒りはごもっともです」
②冷静さを保つ:こちらも感情的にならない
③事実確認に徹する:「事実関係を正確に把握したいので」
④記録を取る:後々のトラブル防止
それでも収まらない場合 NITSの資料では、「こういうことが繰り返されるようであれば話し合いを続けられないことを丁寧に伝え、相手に自制を求めます」とあります。
ケース3:「被害者にも問題がある」と主張される
加害者側から「被害者側にも非がある」という主張が出ることがあります。
【対応方法】
「〇〇さんのお気持ちは理解いたします。ただ、理由がどうあれ、相手を傷つける行為自体は許されないことです。△△さん側の課題については学校として別途対応いたしますので、まずは〇〇さんの行動について一緒に考えさせてください」
文部科学省のQ&Aでも、「理由はどうあれ、その行為自体は許されないことである」と明確に伝えることが推奨されています。
ケース4:長時間の面談や連日の要求
NITSの資料では、対応困難な要求への対処法が示されています。
長時間の訴えが続く場合
連日長時間話を聞くことは誠意を示すことではありません。限られた時間の中で、しっかりと聞くことが大切です。最初に時間設定をお願いするようにします
【面談時の時間設定例】
「本日は1時間お時間をいただければと思います。その中で、保護者様のお話を丁寧にお聞きし、学校からもご説明させていただきたいと思います」
決めた時間を守ってもらえない場合には、途中で打ち切らざるを得ないこともあります。
ケース5:暴言や脅迫的な表現がある場合
暴力行為があった場合、脅迫的表現が使われる場合には、話し合いを打ち切ることを明言します。
【対応方法】
①毅然とした態度を示す
②「このような状況では話し合いを続けられません」と明言
③教育委員会に相談
④必要に応じて警察、弁護士のアドバイスを受ける
ただし、子どもと家族の人生は続いていきます。時に毅然とした対応が必要な場合もありますが、信頼関係構築への取組はその後も続けていくことが前提となります。




限度を超えた場合は、一人で抱えず組織で対応しよう!
学校として組織的に対応する重要性



文部科学省のQ&Aでは、いじめ対応における組織的な取り組みの重要性が繰り返し強調されています。
「いじめ防止対策のための組織」の活用
学校には、いじめの防止・早期発見・対処等、組織的な対応を行うための中核となる組織が設置されています。
この組織を効果的に機能させることが、適切な保護者対応の前提となります。
詳しくは「いじめ防止対策推進法」や「いじめ対応マニュアル」をまとめた記事をチェック!!
担任一人に負担を集中させない
NITSの資料では、「特定の職員に負担がかかり過ぎないように、職員のメンタルヘルスに気を配りましょう」とあります。
- 担任+学年主任+生徒指導主事のチーム編成
- 定期的なケース会議の開催
- 役割分担の明確化
- 管理職への報告と判断の仰ぎ
スクールカウンセラーの活用
文部科学省のQ&Aでは、「教師間やスクールカウンセラー等の間で情報交換を行う」ことが推奨されています。
スクールカウンセラーは、以下の面で力になってくれます。
- 保護者や子どもの心理状態の分析
- 面談時の同席と専門的アドバイス
- 教員のメンタルケア
教育委員会への相談タイミング
NITSの資料では、「学校だけでは解決が困難な場合は、教育委員会と相談したうえで、警察、弁護士などのアドバイスを受けましょう」とあります。
- 保護者が学校の説明を全く受け入れない
- 暴言や脅迫的な言動がある
- 弁護士を立てると言われた
- 犯罪性のあるいじめの場合
一人で判断せず、組織として動くことが大切だね
加害者の子どもと保護者を「支援が必要な存在」として捉える



文部科学省のQ&Aでは、加害者への対応について重要な視点が示されています。
加害者も傷つき、支援を必要としている
加害側の子どももまた傷つき、支援を必要としているので、どんな助けが必要なのかを良く考え、適切に支援を提供しましょう。
いじめをする子どもの背景には、以下のような要因があることが多いのです。
- 自尊感情の低下、傷つき
- ストレス耐性の低下
- 認められていない不満
- 家族関係、友だち関係、先生との関係での悩み
- 学習面、進路面での困難
行動の背景にある心の傷や課題
いじめていた子どもには、いじめをやめさせ再発を防止するため組織的・継続的な指導と支援が必要です。いじめは許されませんが、いじめた子どもも守られるべき存在であることを忘れてはいけません。
保護者にも、この視点を共有することが重要です。
再発防止のための協力関係構築
文部科学省のQ&Aでは、加害者対応について以下のように述べられています。
「どうしてそんなことをしたくなったのか、振り返ってみて何が起こったのか語れるかどうか、問いかけてみましょう。まずは本人の言い分を充分に聴き取ることが第一です」
保護者と協力して、子どもが適切な行動を学べるよう支援していく姿勢が大切です。
全ての子どもを守る姿勢
NITSの資料では、「保護者と協力して子どもの成長を支援する視点」「保護者と学校が協力して、その後の人生に寄り添う視点」が強調されています。
被害者を守ることはもちろん、加害者の成長も支えるという両輪の視点が必要なのです。




加害者も被害者も、どちらも大切な生徒だよ
被害者への謝罪はどう進めるか



加害者保護者から「被害者に謝罪したい」という申し出があった場合の対応についても、注意が必要です。
当事者だけでの接触は避ける
「被害者への謝罪は、第三者同席の下で行う」ことが重要です。
いじめていた子どもの保護者からの謝罪を求める、または、被害にあった子どもと保護者に謝罪したい等の申し出については、気持ちを十分受け止めて、全体を見通して今後考えるべき課題としましょう。
被害者側の気持ちを最優先に
文部科学省の指針でも、加害者と被害者の接触には慎重さが求められています。
【対応方法】
「お気持ちはよくわかります。ただ、被害者側のお気持ちもありますので、謝罪の方法やタイミングについては学校を通して調整させていただきたいと思います」
学校が仲介役となる
謝罪の場を設定する場合も、必ず教員が同席し、感情的な対立にならないよう配慮します。
場合によっては、直接の謝罪ではなく、文書での謝罪や学校を通じた伝達という形を取ることもあります。
困ったときの相談先



教員一人で抱え込まず、外部の力を借りることも大切です。
校内のスクールカウンセラー
文部科学省のQ&Aでも、スクールカウンセラーとの連携が推奨されています。
- 保護者や子どもの心理状態の分析
- 面談への同席
- 教員自身のストレスケア
教育委員会の危機対応チーム
NITSの資料では、「教育委員会の危機対応チームなどとの連携も積極的に行っていきましょう」とあります。
学校だけでは対応困難な場合、早めに相談しましょう。
弁護士への相談
法的問題に発展しそうな場合や、保護者が弁護士を立てた場合は、学校側も法的アドバイスを受けることを検討します。
警察との連携
文部科学省のQ&Aでは、「犯罪行為の場合は、子どもの安全を守るためにも警察に通報することが必要」とあります。
暴行、恐喝、器物損壊など、明らかに犯罪性のある行為については、警察との連携が必要です。
困ったときは一人で抱え込まず、すぐに相談しよう!
まとめ:適切な準備と対応



いじめ加害者の保護者対応は、教員にとって最も難しい業務の一つです。しかし、適切な準備と対応を行うことで、保護者との信頼関係を築き、子どもの成長を支えることができます。
この記事で解説した重要ポイント
①組織的な対応(一人で抱え込まない)
- 複数職員での面談
- 役割分担の明確化
- スクールカウンセラーや管理職との連携
②保護者の気持ちに寄り添う姿勢
- 話を遮らず、最後まで聴く
- 怒りや否定の背景を理解する
- 保護者も苦しんでいることを認識する
③事実に基づいた冷静な説明
- 客観的な事実と推測を区別
- 記録を必ず残す
- 感情的にならず、毅然とした態度
④加害者も「支援が必要な存在」という視点
- 行動の背景にある課題に目を向ける
- 被害者も加害者も両方を守る
- 再発防止のための協力関係を築く
文部科学省のQ&Aでも述べられているように、「いじめの被害者も加害者も傍観者も何らかの意味で傷ついている(あるいは、乗り越えるべき課題を抱えている)という認識を持ちましょう」。
保護者対応は決して楽ではありませんが、適切な対応によって子どもたちの成長を支え、学校と家庭の信頼関係を築くことができます。
困ったときは一人で悩まず、管理職や同僚、外部の専門機関に相談しながら、チームで対応していきましょう。









