教員不足の実態【現場経験者が解説】都道府県ランキングと本当の問題

ゆとり

教員不足って深刻化してるね

はかせ

現場はどんな状態になっているのだろうか

「教員不足」という言葉が報道されるとき、多くの場合は欠員の人数や採用倍率の数字が語られます。でも実際の学校現場を知っている人なら、こう思うはずです。

数字に出ていない部分の方が、ずっと深刻だと。

教員が帳簿上「揃っている」学校でも、現場はギリギリです。発達障害や複雑な特性を持つ子どもへの対応に疲弊して精神疾患になる先生、学級崩壊が起きて他の先生が隙間時間を使って飛び込む先生、不祥事で突然欠員が生まれる現実。これらはいずれも統計には映らない「見えない教員不足」です。

この記事では、公式データと現場の実態の両方から、教員不足の本当の姿をお伝えします。

この記事を読むとわかること
  • 統計に出ない「見えない教員不足」の実態
  • 都道府県別・教員不足率ランキング(ワースト10)
  • 採用試験に合格しても来ない・辞める現実
  • 発達障害・複雑なニーズを持つ子どもへの対応と精神疾患の連鎖
  • 学級崩壊が生む「隠れた欠員」
  • 不祥事・休職・退職による連鎖的な人員不足
  • 「全員揃っていても回らない」学校の日常
目次

数字に出ない「見えない教員不足」とは何か

文部科学省の調査では、2021年度始業日時点で全国の公立学校に計2,558人の欠員があったと発表されています(小中のみで2,086人)。2024年10月には全教(全日本教職員組合)の調査で34都道府県・11政令市に4,739人の未配置が確認されました。

しかしこれらの数字は、ある意味「氷山の一角」です。それどころか、数字が「0」の学校でも、現場では慢性的な人手不足が続いています。

現場を経験した教員の証言が、その実態を端的に表しています。

「全員揃っていても、ゆとりをもって業務にあたっている学校はほとんどない。数字では表れていないが、毎年教員が不足している感覚は現場にある」

なぜ「揃っていても足りない」のか。その構造を順に見ていきます。

採用試験に受かっても辞退する現実

まず教員不足の入口として、採用試験の受験者・合格者が確保できない問題があります。

2025年度の教員採用試験の倍率は全体で2.9倍(過去最低)、小学校に至っては2.0倍(過去最低)。2000年度の小学校12.5倍と比べると、もはや別世界です。受験者数は11年連続で減少し続けています。

学校種2000年度2025年度
小学校12.5倍2.0倍(過去最低)
中学校17.9倍3.6倍(過去最低)
高等学校14.2倍3.8倍(過去最低)
全体13.3倍2.9倍(過去最低)

【参考】都道府県別・教員不足率ランキング(ワースト10)

文部科学省の実態調査(2021年5月1日時点)による、都道府県別の不足率上位10位です。数字が「0」の地域でも現場は余裕がないという点は前述の通りですが、地域差がある実態として参考にしてください。

順位都道府県小学校 不足率中学校 不足率
1位熊本県0.88%1.77%
2位島根県1.46%0.70%
3位長崎県0.78%1.25%
4位福岡県0.70%1.08%
5位茨城県0.64%1.00%
6位福島県0.85%0.57%
7位大分県0.39%0.74%
8位鳥取県0.81%0.38%
9位千葉県0.64%0.41%
10位神奈川県0.52%0.53%

※出典:文部科学省「教師不足に関する実態調査」(令和4年1月公表、令和3年5月1日時点)。都道府県教育委員会のみ対象(政令市は別集計のため除外)。不足率=欠員数÷配当定数。
※東京都・山形県・群馬県・新潟県・和歌山県は同時点で不足なし(0.00%)。ただし2024年現在は状況が大きく変化しており、東京都でも深刻な欠員が発生しています。

さらに深刻なのは、試験に合格しても来ないケースです。高知県教育委員会が2025年に実施した2026年度の小学校教員採用試験では、合格を通知した260人のうち約6割にあたる160人が辞退(12月3日時点)。採用予定数130人のほぼ2倍を合格させたにもかかわらず、確保できたのはわずか101人。急きょ追加選考を実施するほかありませんでした。

なぜ来ないのか。民間企業との待遇差が拡大し続けているからです。ユニクロを運営するファーストリテイリングは新卒初任給を月37万円に引き上げました。教員は残業代が実質的に支払われない「給特法」のもとで、どれだけ働いても給与に反映されない構造です。「合格してから辞退する」という判断は、現場を知れば知るほど合理的に見えるのかもしれません。

参考:朝日新聞「小学校の教員採用、合格者の約6割が辞退 高知県教委、追加選考へ」(2025年12月4日)

教員不足になるのはなぜ?【要因】

発達障害・複雑なニーズへの対応

採用試験を突破して現場に立った先生たちが、次に直面するのが「今の子どもたち」の多様性です。

近年、発達障害の診断を受けた子どもや、家庭的な背景が複雑な子ども、トラウマを抱えた子どもが増加しています。特別支援学級に在籍する児童生徒は2010年の約14.5万人から2022年には約35万人(2.4倍に増えており、通常学級にも支援が必要な子どもが多く在籍しています。

しかし、大学の教員養成課程で特別支援教育を十分に学ぶ機会は限られており、現場に出て初めて「想像と違う」と気づく先生が後を絶ちません。

現場を知る教員はこう語ります。

「採用試験に受かって現場に来ても、発達障害や複雑な特性を持つ子への対応に苦戦して精神疾患になり、休職せざるを得ない実態がある」

この証言を裏付けるのが、文部科学省が2024年12月に公表した数字です。精神疾患で休職した公立学校の教職員は7,119人に上り、初めて7,000人を超えて過去最多を更新。校種では小学校が半数近くを占め、30代が最多でした。

休職後の状況は「復職」39.1%、「引き続き休職」40.8%「退職」20.1%精神疾患で倒れた先生の5人に1人が、そのまま教壇に戻れずにいます。

1人が倒れれば欠員が生まれ、残った先生の負担が増え、また別の先生が倒れる。この悪循環は、統計の数字には表れにくい形で、全国の学校で静かに進行しています。

学級崩壊が生む「隠れた欠員」

精神疾患の一歩手前、あるいはその過程で起きるのが学級崩壊です。

担任の先生が子どもとの関係を築けなくなる、特定の子どもへの対応が難しくなる、そして授業が成立しなくなる——学級崩壊は突然起きるものではなく、じわじわと積み重なった末に表面化します。

現場経験のある教員はこう証言しています。

学級崩壊になり、他の教員が隙間時間にその対応に追われる実態は多々ある」

これが「見えない教員不足」の典型です。帳簿の上では「全員配置済み」でも、ある学級の対応のために他の先生が時間を割かれ、結果として学校全体の人的リソースが目減りしていきます。

その先生本人も、連日の対応で消耗していきます。担任が崩壊したクラスを抱えながら、自分のクラスも見て、会議にも出て、保護者対応もする。そうして限界を超えたとき、次の休職者が生まれます。

放課後子どもが帰った後の現実

教員の仕事が「授業をする」だけだと思っている保護者や地域の方も少なくありません。しかし実際は、子どもが帰った後からが本番、という先生も多くいます。

現場経験のある教員はこう語ります。

「子供が帰ってからも、様々な業務や生徒指導に追われる」

放課後に発生する業務の一例を挙げると・・・

  • 保護者からの電話対応・家庭訪問
  • いじめや友人トラブルの聞き取りと記録
  • 翌日の授業準備・教材作成
  • 成績処理・指導要録・調査書の作成
  • 校内会議・学年会・研修
  • 特別支援が必要な子の個別支援計画の更新
  • 不登校の子どもへの電話・訪問
  • 教育委員会への報告書作成

これらをこなしながら、「先生、今ちょっといいですか」と声をかけてくる子どもにも対応します。余裕がなければ、その一言を受け止めることすらできなくなります。文科省の「#教師のバトン」プロジェクトが炎上した際に集まった声も、この日常を物語っていました。「平日夜9〜10時は普通。年末年始も大みそかと元日しか休めなかった」これは一部の先生だけの話ではありません。

不祥事による「突然の欠員」

教員不足の原因として、あまり語られない要素が不祥事による欠員です。現場を経験した教員はこう指摘しています。

「不祥事を起こして、欠員になることも多々ある」

体罰、わいせつ行為、ハラスメント、窃盗、SNSトラブルなど

教員による不祥事が発生すると、その教員は即座に現場を離れることになります。代替要員の見つからない今の状況では、その穴を「隣のクラスの先生がカバー」するか「管理職が担任代理を務める」しかありません。

問題は、不祥事が起きるのは学校としても、教育委員会としても、「予期できないタイミング」であるという点です。計画的な採用や補充ができず、突然の欠員として学校に降りかかります。

文科省の調査では、学級担任不足を代替している事例として管理職が担任を兼務するケースが53件確認されていますが、その背景には病休・産休だけでなく、こうした不祥事による欠員も含まれています。

「全員揃っている」学校でも余裕はない

ここまでの話を整理すると、「教員不足」には大きく2つの層があることがわかります。

表の教員不足 

統計に出る欠員数。2021年度で2,558人、2024年10月時点で4,739人。

見えない教員不足 

帳簿上は揃っているが、以下の理由で実質的に足りていない状態。

  • 学級崩壊の対応に他の教員が時間を取られる
  • 特別なニーズを持つ子どもへの対応で一部の先生が消耗・倒れる
  • 不祥事による突然の欠員
  • 放課後業務の膨大さで「授業以外」の時間が侵食され続ける
  • 精神疾患の一歩手前で踏みとどまっている先生が多数いる

慶應義塾大学・佐久間亜紀教授が示したある県の実態は象徴的です。正規教員が1,971人欠員→臨任1,821人確保→非常勤122人確保→それでも28人の穴が残り、「あとは現場で」と丸投げ。残った28人分は、現場の先生が無給で自己犠牲によってカバーしました。これが「揃っている」ように見えている学校の裏側です。

数字の裏側にある「実態の構造」

なぜこのような状況が生まれたのか、大きな流れを整理します。

採用倍率が低下し、来た先生の質や準備状況が多様になりました。一方で子どもたちの抱える課題は発達特性、家庭環境、不登校傾向など複雑化しています。新任の先生が「想像と違う現場」に直面し、精神的に追い詰められるまでの時間は年々短くなっています。

現場の先生が倒れると欠員が生まれ、代わりが見つからないまま残った先生でカバーする。残った先生も消耗し、いつかは倒れる。採用倍率が下がり続けているため、次の「補充」も難しくなっている。

この構造は、統計上の「不足人数」が増え続けていることだけでは表現できません。東京都では2024年1月時点で小学校だけで160人の欠員(年度当初の80人から倍増)、全国では4割超の地域が「1年前より悪化した」と回答しています。それでも、「見えている部分」に過ぎないのです。

子どもへの「静かで深刻な影響」

これだけの状況が続いていれば、子どもたちへの影響は避けられません。問題は、その影響が「静かに」積み重なっていくことです。

  • 担任が年度途中で変わり、信頼関係を築けない
  • 学級崩壊が起きても、代わりの先生に余裕がなく長期化する
  • 特別支援の必要な子どもへの個別対応が十分にできない
  • 「先生に相談したい」と思っても、先生が忙しすぎて声をかけられない
  • 少人数授業・個別指導が欠員対応のために削られる
  • 新任教員が「先輩に相談できない」まま孤立し、早期退職する

全国連合小学校長会(全連小)会長は2024年5月の総会で「教員不足は義務教育の根幹を揺るがす大きな課題だ」と訴えました。「根幹を揺るがす」という言葉は、大げさではありません。子どもが安心して学べる環境が、静かに崩れ始めているのです。

まとめ:「数字に出ない教員不足」を知ってほしい

教員不足は、欠員の人数だけで語れる問題ではありません。

採用試験に合格しても来ない先生、来ても発達特性を持つ子どもへの対応に苦戦し精神疾患になる先生、学級崩壊対応で他の先生の時間が奪われる学校、不祥事で突然生まれる欠員、放課後も終わらない業務。これらはすべて、統計に現れにくい「見えない教員不足」です。

帳簿の上で「全員揃っている」学校でも、ゆとりをもって働いている先生はほとんどいない。これが現場を知る人間の正直な証言です。

採用倍率の過去最低更新、精神疾患休職者の過去最多7,119人、高知では2026年度採用で合格者の約6割が辞退。統計に出る数字だけでも十分に深刻ですが、その裏には統計に出ない現実がさらに広がっています。

この問題は、学校だけでは解決できません。社会全体が「先生の仕事とは何か」「子どもたちの学びを誰が支えるのか」を問い直すところから、変化が始まります。

参考資料

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